生活の中で起こるさまざまな変化に、人は少なからずストレスを感じるものです。しかし、そのストレスが強すぎたり、長く続いたりした結果、気分や行動に影響が出るようになった状態を「適応反応症」と呼びます。「心の防衛反応が過剰になっている状態」とも言い換えられるかもしれません。
特定のストレス要因に心が適切に対応しきれなくなったときに、適応反応症が生じます。そのきっかけは人それぞれですが、よく見られるものとしては転職や人間関係の変化、家庭内の問題、経済的な不安、大切な人との死別などが挙げられます。
また、進学や就職、結婚といった一見ポジティブな変化であっても、それに伴う環境の急激な変化が心に負担を与えることがあります。もともとの性格傾向(まじめ・几帳面・責任感が強い)も影響しやすく、自分自身に過度な期待や義務を課してしまう方に多く見られます。
適応反応症の症状は大きく分けて、精神的なものと身体的なものに分かれます。精神的な症状には、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下、意欲の低下、無力感などがあり、自分でもコントロールが難しいと感じることが特徴です。
一方身体的には、睡眠障害、食欲の低下、頭痛や胃の不快感、全身の倦怠感といった症状が見られます。日々の生活に支障をきたすようになると、遅刻や欠勤が増えたり、人との関わりを避けるようになったりする場合もあります。
「いつまで続くかわからない不調」が本人にとって大きな不安となり、症状がさらに強くなる悪循環を生むことには注意が必要です。
適応反応症の治療では、まずストレスの原因となっている出来事や環境を整理し、それに対してどのように向き合い、対処していくかを検討することが大切です。
必要に応じて抗うつ薬や不安薬、睡眠薬などの薬物療法を取り入れることもありますが、それはあくまでも回復を助ける補助的な手段です。ストレスの原因そのものを取り除くことの他、本人のストレス対処能力を向上させることも重要です。
また、周囲の理解や支援も、治療の一部といえます。職場や家庭などの環境に働きかけることで、再発防止にもつながります。心の状態が改善すれば、無理なく元の生活に戻ることが可能です。