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適応障害(適応反応症)とは?症状・原因・うつ病との違い・セルフチェック

適応障害(適応反応症)とは

生活の中で起こるさまざまな変化に、人は少なからずストレスを感じるものです。適応障害とは、はっきりしたストレスの原因(ストレス因)にうまく適応できず、気分の落ち込みや不安などの症状が現れて、仕事や学校、家庭生活に支障をきたしている状態を指す疾患です。心の防衛反応が過剰になっている状態とも言い換えられます。国際的な診断基準(DSM-5-TR)では「適応反応症」と呼ばれますが、従来の「適応障害」と同じ疾患です。

適応障害の大きな特徴は、症状がストレスの原因と連動して現れることです。目安として、ストレスとなる出来事から3ヶ月以内に症状が始まり、その原因がなくなれば6ヶ月以内に改善に向かうとされています。異動や転職、新生活など環境が変わるタイミングで生じやすく、働く世代に多くみられます。

ストレスの感じ方は人によって異なるため、「このくらいのことで」と自分を責める必要はありません。適応障害は誰にでも起こりうる疾患であり、甘えや心の弱さではありません。一方で、無理を続けて放置すると、より回復に時間のかかる状態に移行することもあるため、早期に対処することが大切です。適応障害は、心療内科・精神科の外来で最も多くみられる疾患の一つです。

適応障害の症状|心・体・行動に現れるサイン

適応障害の症状は、心・体・行動の3つの面に現れます。どの症状が強く出るかは人によって異なります。

■ 心の症状

憂うつな気分、不安感、イライラ感、焦り、涙もろくなる、集中力や意欲の低下、これまで楽しめていたことが楽しめない、といった症状がみられます。仕事や学校のことを考えると気分が沈む、些細なことで感情があふれる、という形で自覚されることが多くあります。症状の内容や強さはさまざまで、落ち込みが前面に出る方も、不安が前面に出る方もいます。

■ 体の症状

不眠、食欲の低下、頭痛、腹痛、吐き気、動悸、めまい、倦怠感など、自律神経の乱れによる症状が現れます。日曜の夜や出勤前の朝に症状が強くなる、通勤の途中で気分が悪くなる、といったように、ストレスの場面が近づくと悪化しやすいのが特徴です。体の症状が目立つ方では、内科で検査を受けても異常が見つからず、原因が分からないまま不調が続いていることもあります。

■ 行動の変化

遅刻や欠勤が増える、会社に行こうとすると体が動かない・涙が出る、飲酒量が増える、仕事のミスが増える、人付き合いを避ける、といった行動面の変化が現れることもあります。一方で、ストレスの原因から離れている時は、比較的普段どおりに過ごせることが多く、「休日は元気そうなのに」と周囲からサボりや甘えと誤解されやすい点が、この疾患のつらいところです。

適応障害の原因|きっかけとなるストレス

適応障害のきっかけは人それぞれですが、よくみられるのは、転職・異動・昇進、職場の人間関係やハラスメント、過重労働、家庭内の問題、経済的な不安、大切な人との死別などです。また、進学や就職、結婚、昇進といった一見ポジティブな変化であっても、環境の急激な変化が心に負担を与え、きっかけになることがあります。特に新年度や人事異動の後、連休明けは不調が生じやすい時期で、いわゆる五月病・六月病と呼ばれる状態も、医学的には適応障害と重なる部分があります。

発症には、ストレスそのものの大きさだけでなく、本人の受け止め方や、周囲のサポートの有無も関わります。まじめで几帳面、責任感が強い、頼まれると断れない、自分に過度な期待や義務を課してしまう、といった傾向のある方は、ストレスを抱え込みやすいとされています。ただし、これは性格が悪いということではなく、環境との組み合わせの問題です。同じ出来事でも、その方の状況によって負担の大きさは変わります。

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病は、気分の落ち込みや不眠など症状がよく似ています。「適応障害はうつ病より軽い」と言われることもありますが、つらさの程度は人それぞれで、適応障害でも生活への影響が大きい場合は少なくありません。見分けの軸になるのは、ストレスの原因との関係です。

適応障害では、原因となるストレスがはっきりしており、症状がその原因と連動します。適応障害はストレスの原因から離れるとその症状が軽くなり、うつ病では基本的にはその症状が環境や状況に依存するものではない、というのが大きな違いです。たとえば、休日や休暇中には気分が回復するのに、仕事が近づくと再び悪化する場合は適応障害の可能性が、休日も楽しめず、何に対しても興味がもてない状態が2週間以上続く場合はうつ病の可能性が考えられます。

両者は治療の方針も異なります。適応障害ではストレスの原因を調整する環境調整が治療の中心になるのに対し、うつ病では休養と薬物療法が柱になります。うつ病の症状や治療については専用ページで説明していますので、あわせてご参考ください。判断に迷う場合は、経過を含めて医師にご相談ください。

適応障害セルフチェックリスト

以下は、適応障害にみられやすいサインをまとめたセルフチェックリストです。最近の状態を振り返りながら、当てはまるものがないか確認してみてください。

  1. 異動・転職・入学・引っ越しなど、思い当たるきっかけ(ストレス)がある
  2. そのきっかけの後から、気分の落ち込みや不安が続いている
  3. 仕事や学校のことを考えると、憂うつになったり涙が出たりする
  4. 出勤・登校の前に、頭痛・腹痛・吐き気などの体調不良が出る
  5. 日曜の夜や連休明けに、強い憂うつを感じる
  6. 遅刻・欠勤・早退が増えた、または行けない日がある
  7. イライラして、家族や身近な人に当たってしまうことが増えた
  8. 寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなど、睡眠が乱れている
  9. ストレスの原因から離れている時は、比較的普段どおり過ごせる
  10. このような状態のために、仕事・学業・家庭生活に支障が出ている

なお、このセルフチェックは診断を行うものではなく、受診を検討する際の目安です。当てはまる項目が多い場合でも、うつ病などほかの疾患が背景にあることもあります。きっかけの後から不調が続き、生活に支障が出ている場合は、精神科・心療内科への受診をご検討ください。

適応障害の診断

適応障害の診断は、医師による問診を中心に行われます。血液検査や画像検査で確定できる疾患ではないため、どのようなストレスがきっかけになっているか、症状がいつから現れたか(目安としてストレスから3ヶ月以内)、症状とストレスがどのように連動しているか、生活にどの程度の支障が出ているか、を丁寧に確認しながら総合的に診断します。

あわせて、うつ病や不安症など症状の似た疾患との見分けや、頭痛・腹痛などの身体症状について体の病気が隠れていないかの確認を行います。また、事故や災害など強い恐怖を伴う出来事の後に、その記憶がよみがえるなどの症状が続いている場合は、PTSD(心的外傷後ストレス症)との見分けも必要になります。初診では、問診票のご記入の後、現在の症状、きっかけとして思い当たること、職場や学校の状況などを診察の中でお伺いします。状況を時系列でまとめたメモをお持ちいただくと、診察の参考になります。

診断を受けることは、今のつらさに名前がつき、業務量の調整や休職といった職場との話し合い、治療という次の一歩を踏み出す出発点になります。

適応障害の治療|環境調整と薬物療法

適応障害の治療の中心は、ストレスの原因そのものを調整する「環境調整」です。症状を和らげる薬物療法や、ストレスへの対処力を高める精神療法を組み合わせながら、心の負担を減らしていきます。

■ 環境調整

業務量や業務内容の調整、部署異動の相談、苦手な相手との接点を減らす工夫など、ストレス因を減らす・離れるための調整を行います。職場の上司や人事、産業医と連携しながら進めることもあります。調整が難しい場合や症状が強い場合には、いったん休職して心身を回復させることが近道になることもあり、休職に必要な診断書の発行にも診察の上で対応しています。

環境調整は、ご自身一人で職場と交渉するのが難しいことも多いため、診察で状況を整理しながら、職場への伝え方や進め方も一緒に考えていきます。

■ 精神療法

ストレスの受け止め方を整理し、対処の選択肢を増やしていくことも、再発予防を含めた大切な治療です。考え方の癖を見直す認知行動療法的なアプローチや、困りごとの整理、ストレスへの対処法(コーピング)づくりを、診察の中で行っていきます。「休んでいいのだろうか」という罪悪感や、自分を責める気持ちの整理も、大切なテーマの一つです。

■ 薬物療法

適応障害そのものを治す薬はなく、薬物療法は補助的な位置づけです。不眠が強い時には睡眠薬、不安が強い時には抗不安薬、抑うつ症状が目立つ時には抗うつ薬を、症状に応じて必要最小限の範囲で用います。抗不安薬は長期間の使用で依存が生じることがあるため、短期間にとどめることが原則です。効果や副作用の現れ方には個人差があるため、診察の上で調整します。ストレスの原因がそのまま残っていると薬だけでは改善しにくいため、環境調整とあわせて行うことが大切です。

経過の目安として、ストレス因から離れることができれば、6ヶ月以内に症状は改善に向かうとされています。回復後は、ご自身のストレスサイン(眠れなくなる、食欲が落ちるなど)を知り、早めに対処できるようにしておくことが再発予防につながります。休職した場合も、回復の状況に合わせて復職の時期や働き方を調整していくことで、再発のリスクを減らしていくことができます。

適応障害に関するよくあるご質問

Q.適応障害はどれくらいで治りますか?
A.ストレスの原因から離れることができれば、6ヶ月以内に改善に向かうことが一つの目安とされています。ただし、環境調整の進み方や症状の程度によって経過には個人差があり、原因となるストレスが続いている間は症状も長引きやすくなります。焦らず、状況に合わせた調整を医師と相談しながら進めることが大切です。

Q.薬を飲めば、会社に行けるようになりますか?
A.薬は不眠や不安などのつらい症状を和らげる助けになりますが、ストレスの原因がそのままでは根本的な改善につながりにくいのが適応障害の特徴です。薬物療法はあくまで補助と考え、業務量の調整や休職などの環境調整とあわせて回復を目指すことをお勧めします。

Q.会社を休むのは甘えではないでしょうか?
A.適応障害は、意志の力や我慢で乗り切れるものではありません。無理に出勤を続けて症状が悪化し、回復により長い時間がかかることもあります。休むことは治療の一環であり、甘えではありません。休職すべきかどうか迷っている段階でも、一度ご相談ください。

Q.適応障害かもしれない場合、何科を受診すればよいですか?
A.精神科・心療内科が相談先となります。渋谷こころのクリニックでも適応障害(適応反応症)の診断・治療に対応しております。「病気なのか、ただ疲れているだけなのか分からない」という段階のご相談でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。