WEB予約
03-5454-1849

こころの情報室

適応障害で「もう働けない」と感じたら|休職までの流れと休職中の過ごし方

適応障害とは?仕事のストレスで心身に不調が出ている状態

適応障害とは、職場の異動や人間関係、業務量の増加など、はっきりとしたストレスの原因(ストレス因)に心が対応しきれなくなり、気分の落ち込みや不安、不眠、動悸などの症状が現れて、仕事や日常生活に支障をきたしている状態です。診断基準の改訂に伴い、近年は「適応反応症」と呼ばれることもありますが、ここでは広く知られている「適応障害」と表記します。

適応障害の大きな特徴は、原因となるストレスがはっきりしていることです。一般的に、ストレスとなる出来事が生じてから 3 か月以内に症状が現れ、ストレス因から離れることができれば、症状は比較的すみやかに改善に向かうことが多いとされています。

裏を返せば、ストレスの原因が職場にある場合、その原因に触れ続けたまま治療をしても回復が難しいケースがあるということです。そのため適応障害の治療では、ストレス因から距離を取る「環境調整」が重要であり、その代表的な選択肢のひとつが「休職」です。薬による治療は、不眠や不安などのつらい症状をやわらげる補助的な役割として用いられます。
適応障害そのものの症状・原因・治療について詳しくは、疾患ページ「適応反応症(適応障害)」もあわせてご覧ください。

適応障害で休職を検討したほうがよいサイン

「休職するほどではないのでは」「自分の甘えかもしれない」と、限界まで我慢を続けてしまう方は少なくありません。しかし、次のようなサインが続いている場合は、心身がすでに限界に近づいている可能性があります。

  • 朝になると動悸や吐き気、腹痛が起こり、会社に行けない
  • 出勤前や日曜日の夜になると涙が出る、強い憂うつ感に襲われる
  •  寝つけない、夜中や早朝に目が覚めてしまう
  • 食欲がなく、体重が減ってきた
  • 仕事のミスが増え、集中力が続かない
  • 遅刻や欠勤が増えてきた
  • 「仕事を辞めたい」というより、「仕事から逃げて消えてしまいたい」と感じることがある

こうした状態のまま無理を続けると症状が悪化し、うつ病など、より回復に時間のかかる状態へ移行してしまうことがあります。特に「会社に行けない日がある」「休みの日も仕事のことが頭から離れず休めない」という状態が 2 週間以上続いている場合は、自己判断で様子を見ず、早めに心療内科・精神科へご相談ください。また、「消えてしまいたい」という気持ちが繰り返し浮かぶときは、それだけ心が追い詰められているサインです。2 週間を待たず、できるだけ早い受診をおすすめします。休職が必要かどうかを含めて、医学的な視点から一緒に考えていくことができます。

適応障害で休職するまでの流れ|受診から会社への伝え方まで

適応障害で休職する場合の一般的な流れは、次の 4 つのステップに整理できます。

【ステップ 1】心療内科・精神科を受診する

まずは医療機関を受診し、現在の症状やつらさ、職場の状況をお話しください。診察では、症状の経過やストレスの背景を丁寧に伺いながら、適応障害に該当するか、休職して療養する必要があるかを医学的に判断します。

【ステップ 2】診断書を受け取る

医師が「療養のための休職が必要」と判断した場合、「適応障害のため、○か月間の自宅療養を要する」といった内容の診断書を作成します。当院でも、診察の上、必要と判断した場合には休職用の診断書の作成に対応しています(症状や通院状況によっては、当日にお渡しできない場合もあります)。当院での休職のご相談・診断書の対応について詳しくは、「休職について」のページをあわせてご覧ください。

【ステップ 3】会社に診断書を提出し、休職を申請する

診断書を直属の上司または人事・労務の担当者に提出し、休職を申し出ます。病状の詳細をすべて説明する義務はなく、「医師から療養が必要と診断された」という事実を伝えれば十分です。あわせて、就業規則で休職できる期間・休職中の給与の扱い・必要な手続きを確認しておきましょう。会社への伝え方に不安がある場合は、診察の際にご相談ください。

【ステップ 4】引き継ぎを済ませ、休職を開始する

可能な範囲で業務の引き継ぎを行い、休職に入ります。体調がすぐれないときは、引き継ぎを最小限にする、出社せずメールや書面で行うといった配慮を会社に相談することもできます。

適応障害の休職期間はどのくらい?

適応障害による休職期間は、症状の程度やストレス因の内容によって個人差がありますが、まずは1〜3 か月程度の休職から始めるケースが多く見られます。診断書には「1 か月」「3 か月」などの期間が記載されますが、これはあくまで初回の見込みであり、回復の状況に応じて、診察のうえで延長や短縮が検討されます。「2 週間ほど休めば大丈夫」と、短い休職を希望される方もいらっしゃいます。しかし、数日〜2週間程度の休みでは、心身の疲労が十分に回復しないまま職場に戻ることになりやすく、かえって再発や長期化につながるおそれがあります。復帰の時期を焦って決めるのではなく、主治医と相談しながら、回復の状態に合わせて柔軟に期間を調整していくことが大切です。

なお、会社に在籍したまま休職できる期間の上限は、勤続年数などに応じて就業規則で定められており、会社ごとに異なります。休職に入る前に、人事担当者に確認しておくと安心です。
一般的に、適応障害はストレス因から離れることができれば 6 か月以内に症状が改善することが多いとされています。一方で、十分に休んでも回復が思わしくない場合には、うつ病など他の疾患の可能性も含めて、診断を見直しながら治療方針を検討していきます。

適応障害の休職中の過ごし方|回復までの 3 つの段階

休職中の過ごし方にただひとつの「正解」があるわけではありませんが、回復の経過は、おおまかに次の 3 つの段階に分けて考えることができます。

【第 1 段階】休養期:とにかく心と体を休める

休職を開始した直後は、心身のエネルギーが大きく消耗している状態です。まずは仕事のことを考えず、眠りたいだけ眠り、何もしない時間を自分に許してあげてください。「休んでいることへの罪悪感」を抱く方はとても多いのですが、休養そのものが治療の一環です。会社の連絡ツールやメールを見なくてよい環境をつくることも、回復の助けになります。

【第 2 段階】回復期:生活リズムを整え、少しずつ活動を増やす

睡眠や食欲が戻り、気持ちに少し余裕が出てきたら、起床・就寝の時間を一定にする、朝に日光を浴びる、散歩などの軽い運動をするといった形で、生活リズムを整えていきます。趣味や外出を楽しめるようになってくるのもこの時期です。調子には波があって当然ですので、できない日があっても自分を責める必要はありません。

【第 3 段階】復職準備期:復帰に向けた準備を進める

体調が安定してきたら、通勤時間に合わせて外出してみる、図書館などで一定時間過ごしてみるなど、復職を意識した生活に移行していきます。復職への不安が強い場合には、リワークプログラム(復職支援プログラム)の利用を検討したり、再発を防ぐためのストレスとの付き合い方を診察の中で整理したりすることも有効です。
どの段階でも、定期的な通院は続けてください。回復のペースには個人差があります。主治医と相談しながら、焦らず一歩ずつ進めていきましょう。

休職中のお金が不安なとき|「傷病手当金」という制度があります

「休職したいけれど、収入が途絶えるのが不安で踏み切れない」という方は少なくありません。会社の健康保険に加入している方であれば、適応障害などの病気やけがで働けない期間について、「傷病手当金」を受け取れる場合があります。
傷病手当金の主なポイントは次のとおりです。

  • 仕事に就けない日が連続 3 日間続いたあと(待期期間)、4 日目以降の働けなかった日に対して支給される
  • 支給額は、おおむね給与(標準報酬月額を基準とした金額)の 3 分の 2
  • 支給される期間は、支給開始日から通算で最長 1 年 6 か月
  • 申請書には医師が記入する欄があり、医療機関での証明が必要

申請の手続きは、勤務先の人事・労務担当を通じて行うのが一般的です。当院でも診察の上、傷病手当金申請書の医師記入欄の作成に対応していますので、休職が決まりましたらお申し出ください。制度の詳細や支給要件は、ご加入の健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)にご確認ください。

適応障害からの復職と、再発を防ぐために

症状が安定し、生活リズムが整ってきたら、復職に向けた準備を始めます。復職までの一般的な流れは、①主治医が「復職可能」と判断し診断書を作成する、②会社(産業医・人事)との面談を行う、③復帰の時期や働き方を具体的に調整する、というものです。
このとき大切なのは、「休職前とまったく同じ環境に、そのまま戻らない」ことです。適応障害はストレスの原因がはっきりしているからこそ、同じ環境・同じ働き方に戻れば、再び症状が現れるリスクが高くなります。復職にあたっては、次のような調整を会社と相談してみてください。

  • 時短勤務や残業制限からの段階的な復帰
  • 業務量や業務内容の調整
  • ストレス因となった部署からの異動・配置転換の相談
  • 産業医や保健師との定期的な面談

また、復職後しばらくは調子の波が出やすい時期です。「復職できたから通院は終わり」とせず、体調が安定するまでは通院を続け、不調のサインを早めにキャッチできるようにしておくことが、再発予防につながります。
休職前と同じ職場に戻ることへの不安が強い場合は、その気持ちを我慢せず、主治医や産業医に率直にお伝えください。復帰先の環境をどう整えるかは、再発を防ぐうえで最も重要なポイントのひとつです。

適応障害の休職に関するよくある質問

Q.休職せずに、働きながら治すことはできますか?
A.症状が比較的軽く、業務量の調整や配置転換などによってストレス因から距離を取れる場合には、働きながら治療を続けられるケースもあります。ただし、症状が強い場合や職場での環境調整が難しい場合には、休職して療養に専念するほうが、結果的に回復への近道となることも少なくありません。診察のうえ、お一人おひとりの状態に合わせてご提案します。

Q.診断書はすぐにもらえますか?
A.診察の上、医師が療養のための休職が必要と判断した場合に作成します。(当院での対応の詳細は「休職について」のページをご覧ください。)

Q.休職したら、会社に迷惑がかかるのではないかと不安です。
A.そのように感じてしまうお気持ちは自然なものです。しかし、不調を抱えたまま働き続けることは、ご自身の回復を遅らせるだけでなく、結果的により長い離脱につながってしまうこともあります。休職は労働者に認められた制度であり、治療の一環です。ひとりで抱え込まず、まずは今のつらさをご相談ください。

Q.休職中に外出や旅行をしてもよいのでしょうか?
A.回復期に入り、外出や気分転換ができるようになること自体は、回復の良い兆候です。ただし、体調が整わないうちの遠出はかえって負担になることがあるほか、S N S への投稿が職場との思わぬ誤解を招くこともあります。判断に迷うときは、診察の際に主治医へご相談ください。

まとめ:休職は「逃げ」ではなく治療の一環です

適応障害は、はっきりとしたストレス因に心が対応しきれなくなって生じる状態であり、ストレス因から距離を取ることが回復への第一歩です。「会社に行けない」「朝になると体が動かない」という状態は、決して甘えでも逃げでもなく、心身が発している S O S のサインです。休職が必要かどうかの判断から、診断書の作成、休職中の過ごし方、傷病手当金の手続き、復職のタイミングまで、診察の中で一つひとつ一緒に整理していくことができます。仕事のストレスによる心身の不調にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
院長
渡辺雄至

福井大学医学部医学科を卒業し、2年間の臨床初期研修を修了。
大阪市立大学医学部附属病院神経精神科、ハートランドしぎさん病院などで研鑽を行い、2021年より本クリニック院長に就任。

所持資格
  • 精神保健指定医
  • 精神神経学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • コンサータ登録医