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こころの情報室

「自分はADHDかもしれない」と思ったら|大人の診断の流れ・何科・検査・費用のこと

大人になってから「ADHDかもしれない」と気づく方が増えています

「会議の内容をすぐ忘れてしまう」「ケアレスミスがどうしても減らない」「片づけや締め切りが苦手で、仕事に支障が出ている」。こうした困りごとをきっかけに、大人になってから「自分はADHD(注意欠如多動症)かもしれない」と気づく方が増えています。

ADHDは子ども特有のものではありません。もともとの特性が、就職・昇進・転職などで求められることが増えたタイミングで表面化し、大人になって初めて気になり始めるケースが多くあります。

もっとも、「今すぐ診断を受けたい」と決めている方ばかりではないはずです。「気になるけれど、病院に行くほどなのか分からない」「診断を受けるべきかどうか迷っている」。そうした段階の方も少なくありません。診断は、自分に「病気」のレッテルを貼るためのものではなく、困りごとの背景を整理するための選択肢のひとつです。診断とはどのようなもので、受けるとしたらどこで・どのように進むのか、検査や費用のことまでを知っておくと、受けるかどうかを考える材料になります。

ADHDそのものの症状や特徴について詳しく知りたい方は、疾患ページ「注意欠如多動症(ADHD)」をあわせてご覧ください。

ADHDの診断は何科で受けられる?

大人のADHDの診断は、精神科・心療内科で受けられます。「大人になってから発達障害の相談をしてもいいのだろうか」とためらう方もいらっしゃいますが、大人のADHDのご相談は、多くの精神科・心療内科で日常的に行われている診療のひとつです。特別な専門機関を探さなければ受けられない、というものではありません。(18歳未満の方は、児童精神科や小児科の発達外来が窓口になることが一般的です)

診察の結果、より詳しい検査や専門的な対応が必要と判断された場合には、検査が可能な医療機関と連携しながら進めていくこともできます。

当院(渋谷こころのクリニック)でも、大人のADHDのご相談・診断に対応しています。「診断を受けるかどうかまだ迷っている」という段階のご相談も可能です。

セルフチェック(診断テスト)と医療機関の診断の違い

インターネット上には、ADHDの「診断テスト」「セルフチェック」が数多くあります。代表的なものに、WHO(世界保健機関)が作成した成人ADHD自己記入式症状チェックリスト(ASRS)があります。

こうしたセルフチェックは、ご自身の傾向を知り、受診のきっかけにする上では役立ちます。しかし、セルフチェックの結果は「診断」ではありません。チェックリストで高得点だったからADHDと確定するわけでも、点数が低かったから違うと言い切れるわけでもないのです。

その理由は、ADHDと似た困りごとが、他の要因でも起こるためです。たとえば、うつ病や不安障害でも集中力の低下や物忘れは生じますし、睡眠不足や強いストレスだけでも似た状態になります。ADHDの診断には、こうした他の可能性との見極め(鑑別)が欠かせず、それができるのは医師の診察だけです。

「セルフチェックでは当てはまったけれど、病院に行くほどなのか分からない」という方こそ、一度診察でご相談ください。診断に至るかどうかにかかわらず、困りごとの背景を整理するお手伝いができます。

ADHDの診断基準|どんな条件で診断されるのか

ADHDの診断は、国際的な診断基準に沿って行われます。現在広く使われているのは、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)です。ポイントをかみくだくと、次のようになります。

  • 不注意(忘れ物・ケアレスミス・集中が続かないなど)と、多動性・衝動性(じっとしていられない・順番を待てない・考える前に行動してしまうなど)の症状のうち、一定数以上が当てはまること(17歳以上では、それぞれ5つ以上が目安とされています)
  • その症状が、12歳になる前から存在していたこと
  • 家庭と職場など、複数の場面で症状がみられること
  • 症状によって、仕事や日常生活に明らかな支障が出ていること
  • うつ病や不安障害など、他の疾患だけでは説明できないこと

大切なのは、「症状がいくつ当てはまるか」だけで決まるのではなく、子どもの頃からの経過と、生活への支障の程度を含めて総合的に判断される、という点です。だからこそ、ADHDの診断には時間をかけた丁寧な問診が必要になります。

診断までの流れ|初診から診断までの4ステップ

【ステップ1】医療機関を予約し、受診する
大人のADHDの診療に対応した精神科・心療内科を予約します。初診では、現在いちばん困っていることを中心に、これまでの経過をお伺いします。

【ステップ2】問診で、今の症状と子どもの頃の様子を確認する
いつから、どんな場面で、どのような困りごとがあるかを詳しくお聞きします。ADHDの診断では「12歳以前から症状があったか」が要件になるため、子どもの頃の様子がとても重要です。母子手帳や小学校の通知表、ご家族からの情報があると、診断の大きな助けになります。資料が手元になくても、覚えている範囲のエピソード(授業中の様子、忘れ物の頻度、通知表に書かれていたことなど)をメモしておくだけでも十分に役立ちます。

【ステップ3】必要に応じて、心理検査などを行う
症状チェックリストや心理検査を補助的に用いて、特性の程度の把握や、他の疾患との鑑別に役立てます。検査の内容は次の章でご説明します。

【ステップ4】診断と、今後の方針の説明
問診や検査の結果を総合して、診断をお伝えし、今後の方針(環境調整や治療の選択肢など)を一緒に考えていきます。

なお、大人のADHDの診断は、1回の診察では確定しないことも珍しくありません。子どもの頃の情報を集めるのに時間がかかったり、うつ病などが併存していて症状の見極めが必要だったりするためです。焦らず、数回の診察をかけて丁寧に判断していくものと考えておいてください。

どんな検査をするの?|問診と心理検査の内容

「ADHDの検査」と聞くと、血液検査や脳の画像検査を思い浮かべる方もいらっしゃいますが、ADHDは検査の数値だけで診断できる疾患ではありません。診断の中心はあくまで医師による問診で、検査はそれを補助する位置づけです。よく用いられるものには、次のようなものがあります。

  • 症状チェックリスト(ASRS、CAARSなど):不注意や多動性・衝動性の程度を数値化し、症状の全体像をつかみます
  • 知能検査(WAISなど):得意・不得意の偏りを把握し、困りごとの背景の理解や、他の要因との見極めに役立てます
  • そのほかの心理検査・質問紙:うつ病や不安障害など、併存しやすい状態の評価に用います

どの検査を行うかは、症状や経過によって一人ひとり異なりますし、すべての方に検査が必要なわけでもありません。また、実施している検査の種類は医療機関によって異なります。特定の検査を希望される場合は、受診前に問い合わせておくとスムーズです。

ADHDの診断にかかる費用の目安

大人のADHDの診察には、健康保険が適用されます。あくまで目安ですが、3割負担の方で、初診は2,500〜4,000円程度、再診は1,500円前後になることが一般的です(医療機関や、処方・検査の有無によって変わります)。

  • 心理検査を行う場合は、検査の種類に応じた費用が別途かかります(保険適用の場合、自己負担は数百円〜数千円程度が目安です)
  • 診断書などの書類の作成は、健康保険の対象外(自費)です

また、診断後に治療を続けていく場合には、自立支援医療制度など、通院にかかる医療費の負担を軽くできる公的制度を利用できることがあります。制度のことも、診察の中でご案内できますので、費用面が心配な方も安心してご相談ください。費用の詳細は医療機関によって異なるため、気になる場合は受診前にお問い合わせいただくのが確実です。

受診の前に準備しておくとよいもの

受診の際に、次のようなものを用意しておくと、診断がスムーズに進みやすくなります。

  • 困りごとのメモ(いつから・どんな場面で・どのくらいの頻度で起こるか)
  • 母子手帳
  • 小学校の通知表(特に、生活面・行動面のコメント欄)
  • ご家族から見た、子どもの頃の様子についての情報
  • 現在服用中のお薬の情報(お薬手帳)

すべてが揃っていなくても、受診はもちろん可能です。母子手帳や通知表は、大人になってからでは手元に残っていない方のほうが多いくらいですので、「用意できないから」と受診をためらう必要はありません。あるものだけで構いませんし、覚えている範囲の子どもの頃のエピソードをメモしておくだけでも十分です(メモは長い文章ではなく、箇条書きで構いません)。また、必要に応じて、ご家族から子どもの頃のお話を伺うこともあります。

ADHDの診断に関するよくある質問

Q.診断されたら、どうなりますか?
A.診断はゴールではなく、対処のスタートです。特性に合わせた環境調整(仕事の進め方や生活の工夫など)を軸に、必要に応じて薬物療法などの治療の選択肢をご提案します。治療について詳しくは、疾患ページ「注意欠如多動症(ADHD)」をご覧ください。

Q.診断がつかないこともありますか?
A.あります。診断基準を満たさないものの、特性による困りごとを抱えている、いわゆる「グレーゾーン」の方も少なくありません。その場合も、困りごとへの対処を一緒に考えていくことはできます。診断の有無にかかわらず、つらさがあることに変わりはないからです。

Q.「診断は受けないほうがいい」という意見も見かけます。
A.診断を受けるかどうかは、ご本人が決めてよいことです。診断には、困りごとの原因が分かる、対処や治療につながる、必要に応じて支援制度を利用できるといった利点があります。迷っている段階でのご相談も可能ですので、ご自身にとっての利点と気がかりを整理した上で、ご自身のペースで決めていきましょう。

Q.診断を受けたことは、会社に伝わりますか?
A.医療機関から、ご本人の同意なく勤務先に伝わることはありません。会社に伝えるかどうか、伝えるとすればどのように伝えるかも、診察の中でご相談いただけます。

Q.家族がADHDかもしれません。本人の代わりに相談できますか?
A.診断や治療には、ご本人の受診が必要です。受診を無理にすすめると、かえって心を閉ざしてしまうこともあるため、ご本人のペースを尊重しながら見守ることも大切です。ご家族として対応に迷う場合は、発達障害者支援センターなどの公的な相談窓口を利用する方法もあります。

まとめ:診断は、これからを整えるための出発点です

大人のADHDの診断は、精神科・心療内科で受けられます。セルフチェックは受診のきっかけとして役立ちますが、診断ができるのは医師の診察だけです。診断は自分にレッテルを貼るためのものではなく、長年の困りごとの背景を理解し、これからの働き方・暮らし方を整えていくための出発点です。

「もしかしてADHDかもしれない」と感じながら、誰にも相談できずにいた方も、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
院長
渡辺雄至

福井大学医学部医学科を卒業し、2年間の臨床初期研修を修了。
大阪市立大学医学部附属病院神経精神科、ハートランドしぎさん病院などで研鑽を行い、2021年より本クリニック院長に就任。

所持資格
  • 精神保健指定医
  • 精神神経学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • コンサータ登録医